HAFUOコンサート出演:

H.I.指揮者によるドキュメンタリー報告

今回はHFGの女性メンバー9名に助っ人参加5名の合わせて14名プラス私の編成で の出場となりました。

最年少は中学一年生のK.S.ちゃん。ありがとう!

このイベント、どういう主旨なのか、今一つはっきりしなかったのですが、

タイトルが「Chao Nam Moi 2015/Happy New Year 2015」

主催はHAFUO、何の略でどういう団体かはわかりません。

プログラムを見ると、ベトナムを始め、ロシア、パレスチナ、韓国、インドネシ ア、日本など各国から演目が出され、それぞれの大使館が取り纏めているようです。


では、当日の様子をドキュメンタリー・タッチで綴っていきましょう。

 

2015年2月13日、金曜日(ここは黒幕に白文字でタイプの打鍵音が流れるところ)。

17時45分。集合時間ピッタリにオペラハウス前に到着。

ハウス前の階段上にアオザイで着飾ったベトナム人5~6人がたむろしている。

近付いてよく見ると、ベトナム人ではなく、HFGの女声陣。

みな、アオザイが良く似合っている。

案内係りのカワイイ女性スタッフ(ベトナム人)に連れられて会場入り。

ステージではすでにリハーサルが始まっており、耳をつんざく大音量がロビーに 流れ出していた。

「CDを持ってきたか?」とカワイイ女性スタッフが聞いてくる。

みんな伴奏用のCDを大音量でかけて、それに合わせてパフォーマンスをしている。

どうやら、どの出し物も“つんざきモノ”で勝負するようだ。

ボクは密かにほくそ笑んだ「アカペラが勝つ!」(別に勝ち負けは関係ないのだが)

客席の一角(舞台に向かって左端)を陣取ったHFGは、みんなそれぞれの衣装を 褒めあい、大いに盛り上がっている。

いつも黒のスーツ、ドレスかHFG・Tシャツしか目にしないので、今回のドレスや アオザイはとてもカラフルで美しく、気持ちが華やぐ。

OさんとTさんはロビーでMCの打合せ、練習をしている。

今回、本番2~3日前に急に思い立って、HFGの紹介と曲目のMCを、Oさんに英語で、Tさんにベトナム語でお願いした。

これが後に大きな効果を生むことになる。

 

いよいよ、我々のリハーサルの番が来た。

カワイイ女性スタッフが「マイク5本用意してアリマ~ス」と勧めてくれたが、 我らはナマゴエでやるんじゃ!と丁重にご辞退申し上げる。

ナマ声でやるからにはギリギリ、ステージの前まで出て歌ってやろうと思い、ボ クはステージの縁に踵がかからんばかりの所に立ち位置を決めた。

すると、カワイイ女性スタッフの隣りにいた、ふてぶてしい面構えの舞監(舞台 監督)が、

「アンタねぇぇ、この客席の最前列、誰が座るか分かってるの?各国のVIPが鎮 座ましますんだよ!これじゃ、あんたのケツしか見えねえじゃねぇ か!」

仕方なく3歩ほど後退。

舞監が「もっとだよ!」

と、O事務局長が「兄ちゃん、これはウチラの組のスタイルなんじゃ、ボ ケ!」とかましてくれた!おお、さすが事務局長!

でも、カワイイ女性スタッフが「もう少し下がってくれます?」とのお願いに、 「ハイハイ、そっしましょう!」と素直なボク。

1曲目「ホーおじさん」まだ、準備運動もしていないので、声出しのつもりで歌う。

2曲目「Ave Verum Corpus」曲の途中でボクは客席に回り、皆の声を聴く。オペ ラハウスといっても、ハノイのは500席ほどのこじんまりしたホールだ。

女声がどこまで届くか心配だったが、1階の後方までしっかりと聞こえる。各人 の声がかなり明瞭に聞こえるので、ミスも目立つ。このホール反響が少 ない。

まぁ、客席に人が入れば声も丸くなるだろう。でも、女声コーラスはとても綺麗だ。

3曲目「ふるさと」今回は3拍子をズン、タッ、タッ でなく、ワーァーァン、 ツーゥーゥン と1拍目で拍子を取って、ゆりかごが揺れるような滑ら かな、そ して早目の

テンポで歌いたいと思っていた。

 

無事、リハを終え、本番まであと30分。

我々の出番はオープニング、お偉いさんの挨拶が終わってから始まる出し物の5番目だ。

19時45分にバックステージの機材搬入口(いつもの所)に集合するまで自由行動。

ところが、開演予定の19時30分になっても舞台ではまだリハーサルをやってい る。客席も空席が目立つ。

開始10分過ぎにVIP席にお偉いさんが到着。客席もほぼ埋まってくる。

やはり、ベトナム時間であったか。

45分にバックステージに行く。誰もいない。

やはり、HFG時間であったか。

三々五々メンバーが集まってくる。まだ、衣装の話で盛り上がっている。キン チョーしないってことは、いいことだ・・・

と、突然、○さんが△さんの胸をアオザイの上から押し始めた。

いわゆる、“模造品”かどうかを確かめているのだろう。

景品表示法違反、または知的財産権の侵害?などの可能性もあり、○さんの検査 行為は正当であるのだが、

ボクとしては、目の前の光景にどう対処すべきか・・・

そう、無視が一番。平静を装ったつもりだが、どんな顔してたのだろう?

ボクも一応男である。オオカミになることだって・・・(おおカミよ!)

 

色者から指揮者に気持ちを改め、柔軟体操、呼吸法、発声練習をソツなくこなす。

廊下を挟んだ向う側のステージでは本番が始まっている。

搬入口で普通に歌っても、CDガンガンかけまくりの歌や踊りの裏では、私たちの 合唱練習が客席に聞こえることはまずない。

と、思いつつもそこは「人様に迷惑だけはかけぬ様」諭されて育った日本人。

女声陣は私の周りにギュッと集まってAve Verum Corpusを囁くように歌い始めた ではありませんか。

耳元でささやかれるAve Verum Corpusまさに天女の歌声!

おおカミよ!

この時、初めて、「色者、いや、指揮者になって良かったニャ~」と思った。

しかぁ~し、シアワセは長くは続かない。歌が半分も終わらないうちにカワイイ 女性スタッフが本番を告げに来た。

そのままソデに待機。

この時、ボクは例の隠し撮り用の超小型ビデオレコーダーのスイッチを入れた。 この愛機を譜面台の上に置いて録画するつもりだ。

暗いソデから眩い光のステージに向かう。この時の緊張感がボクは好きだ。

一列に整列して、Oさんの英語によるMCが始まる。続いてTさんのベトナム 語MC。

ベトナム人は外国人がベトナム語をしゃべると異様に喜ぶ。この時も一気にベト ナム人の表情が緩むのが分かった。

この雰囲気に乗じて「ホーおじさん」をぶちかませば、ベトナム人のつかみはOK。

ボクは間髪を入れずに腕を振り下ろした。

出だしがモヤっとした。

やはり、みなキンチョ―しているな。

でも、すぐにいつもの歌声に戻った。

直ぐに会場から手拍子が聞こえてきた。

一週間前の練習の時、サビの“Viet Nam Ho Chi Minh ♪~”の所を2声部で2拍ず らしてやまびこの様に歌うようアレンジしてみた。

曲が終わると同時に大拍手!

 

この時まで、ボクは全く気付いていない。

 

2曲目のMCに入る。

Ave Verum Corpusは一応楽譜を頭の中に入れてはあるが、万が一ということも あって、譜面台の上に譜面を広げた。

この時、愛機が落ちた。

譜面も落ちた。

ガツ、バサ

「なにぶち壊してんのよ!」と、嘲笑、失笑がメンバーから投げつけられる。

ここでめげちゃいけない。気を取り直して一瞬目を閉じ、モーツァルトの魂を呼 び出す。

Ave Verum Corpusは天才モーツァルト晩年の曲(と言っても彼は35歳の若さでこ の世を去った)の傑作中の傑作だ。

まさに、神が作りたもうた曲である。

実は、この曲をパート分けしたのは1週間前。女声3部に分けたのだが、この日に は完成しなかった。

ダメなら斉唱でいいや。皆様になごんでもらえれば。名付けて「モーツァルトの せいしょう なごん」方式を考えていた。

ところが、ここでもHFGの伝統が炸裂した。本番に強い!

リハの時、ちょっとヨレるところもあったが、これ、イケる!と感じた。

モーツァルトの魂が十分私に乗り移ったところで、静かに目を開き、腕を挙げた。

すると、O事務局長が何やら厳しい表情でボクに訴えかけている。

ん?と聞き返すと

「音!」

おお、そうであった。出だしの音取りだ。

ボクはポケットからピッチパイプを取り出し、各パートの音を吹く。

と、この時、愕然とした!(火曜サスペンス劇場のディミニッシュ/減七の和音 が鳴り響く)

⦅もしかして、ホーおじさんの時、音取りしなかった?⦆

してなかった・・・

しかし、HFGの女声陣は何事もなく、平然と歌いのけたのである!

《皆さん、本当にごめんなさい!反省してます》

 

だが、これが刺激となって、音楽に集中することが出来た。

それまで、ポヤっと振っていたのが、先の小節を読み、各パートに指示を出し、 その場で音楽を作り上げる努力をした。

終わったら汗びっしょりである。冬なのに額からポタポタ汗が落ちている。あま り、いい汗じゃないね。

最後の「ふるさと」はワタシのテンポが曖昧なまま出てしまった。結果、ズン、 タッ、タッ三拍子になってしまった・・・

でも、この曲はHFGの十八番。大使館のOさんからも、「とても感動した」と お褒め頂いた。

静かに終止音が消えると、一瞬の間をおいて盛大な拍手!

音楽家冥利に尽きる瞬間だ。これを経験しちゃうと、大きな会場で演奏したくなる。

ソデに引っ込むとOパートリーダーに大笑いされた。

ボクは照れ笑いするしかない。

日本大使館のOさんから素敵な花束を頂いた。

みんなテト休暇はハノイに居ないので、唯一居残り組のボクが素敵な花束を持ち 帰ることに。

「花とオジサン」ミスマッチ。ゲスの極み乙女 →コレ、ググってみて。

その後、オペラハウスの踊場階段で記念撮影。

そして、パネビーノへ打ち上げに。

ご家庭をお持ちの方も多いから打ち上げは数人でささやかに、と思っていたら、 10名以上の大宴会に。

Cちゃんにとっては最後のHFG演奏となりました。

Cちゃんからは各メンバーにプレゼントが手渡されました。

Cちゃん、ありがとう!また、会おうね!


宴は11時過ぎまで続きましたとさ。